技術コラム
ギケンの樹脂切削加工サービス
2025.05.29
ギケンは樹脂切削をはじめとした樹脂加工のスペシャリスト
最適な加工方法の提案、材料選定のご相談、試作から量産までのトータルサポートを実現しています。



樹脂切削加工とは?
樹脂切削加工とは、ABSやPC(ポリカーボネート)などのプラスチック素材を工作機械で切削して、所望の形状に削り出す加工方法です。金型不要で材料を一品ずつ削って成形するため、小ロット生産や試作品製作に適しています。
メリット(長所):
– 高精度な加工が可能
– 金型費用が不要なため初期コストを抑えて短納期対応
– 設計変更への柔軟な対応
デメリット(短所):
– 大量生産に不向き(コスト高になる可能性)
– 加工形状に制約あり(アンダーカット形状や細孔)
– 加工時の熱による変形リスク
加工対応素材と材料選定ポイント
主な加工素材:
- ABS樹脂(汎用性が高く加工性に優れ、見た目も良好)
- PC(ポリカーボネート)(透明性、耐衝撃性に優れ、寸法安定性も高い)
- POM(ポリアセタール)(耐摩耗性、自己潤滑性があり、寸法安定性に優れる)
- ナイロン(耐摩耗性、靭性が高いが、吸水による寸法変化に注意)
樹脂切削加工の精度と表面仕上げ
– 一般的な寸法公差: ±0.1mm
– 超精密加工: ±0.01~0.03mm
– 表面仕上げ: 基本的なツールマークが残るが、研磨等で美しい仕上がり可能
加工精度について
樹脂切削加工で得られる精度は、設計要求や素材によって様々ですが、一般的な寸法公差の目安は±0.1mm程度とされています。高度な加工技術を用いれば±0.01~0.03mmレベルの超精密加工も可能であり、これは通常の射出成形品の寸法公差(±0.03~0.05mm程度)よりも高い精度です。
真空注型や光造形(3Dプリント)の精度がせいぜい±0.1mm程度とされる中で、切削加工は別格の精度領域を実現できることが分かります。ただし、極限まで高い精度を追求すると、切削後に研磨・ラップなどの追加仕上げ工程が必要になるケースもあり、その分コストやリードタイムが増加する点には注意が必要です。図面上で厳しい公差を指定する際は、必要性とコストのバランスを考慮することが重要です。
表面仕上げの特徴
表面仕上げについては、切削加工特有のツールマーク(工具の通った筋模様)が基本的に残ります。ただし、プラスチックは金属よりも削り跡が目立ちにくく、比較的平滑な表面が得られる場合が多いです。
例えばABS樹脂は切削面に自然な光沢が出て見栄えも美しく仕上がるため、追加の研磨なしでも外装用途に耐えるケースがあります。一方、透明樹脂(アクリルやポリカーボネートなど)の場合、切削直後は曇ったような表面になりますが、研磨やコーティング処理を施すことで光学的に透明な仕上げも可能です。
品質向上のアプローチ
要求される表面粗さや外観レベルに応じて、以下の方法を組み合わせることで目的の仕上がり品質を得ることができます:
- 切削条件の最適化(切削工具の選定や送り速度調整など)
- 二次仕上げ(研磨・バフ掛け・コーティング)
実際の事例として、医療機器向けの透明カバー部品では切削後に細かな研磨加工を行い、ほぼ成形品同等のクリアさを実現したケースもあります。
樹脂切削加工はこのように、精度と表面品質のコントロール範囲が広い加工方法といえます。
お役立ち情報:業者選定時の豆知識
加工業者目線からオススメする
切削加工業者選定のポイント
実際の切削業者である、ギケンが、加工業者目線で切削加工業者選定のポイントを紹介します。
基本は以下の3つのポイントで発注先を見極めましょう。
1. 技術力・経験
- 加工実績:希望する精度・形状に対応できる技術力と豊富な経験があるか
- 設備・体制:最新設備の導入状況、品質管理体制
- 得意分野:類似材質・形状の製作例があるか
2. 納期の遵守と対応力
- 納期実績:過去の納期遵守率と取引先からの評判
- 対応の速さ:問い合わせ時のレスポンスと柔軟性
- 緊急対応:短納期・急な依頼への対応可否
3. コストと提案力
- 価格の妥当性:複数社での相見積もり比較
- 提案力:VAVE提案(コストダウン提案)の有無
- 総合力:品質・コスト・納期のバランスを考慮した提案ができるか
費用・納期の目安
費用の目安
基本構造:機械加工時間×時間単価(約4,000円/時間)+材料費
- 小型部品:1~1.5万円前後(加工時間2~3時間)
- 材料費:汎用樹脂数百~数千円/kg、高機能樹脂は数万円/kg
- コツ:複数個まとめて発注すると単価が割安になる
納期の目安
- 一般的な試作:約1週間
- 最短納期:1~3日(条件が揃った場合)
- 複雑・多数個:1~2週間以上
コスト削減のヒント
- 必要以上に厳しい精度・仕上げ要求を避ける
部品の精度や表面仕上げの要求を必要以上に厳しくしないことも重要です。過度な高精度・高品位を指定すると加工工程が増え、費用が膨らむ原因になります。必要十分な公差や仕上げレベルに見直すことで、無駄な加工を減らしコストダウンにつなげられます - シンプルで削り出しやすい形状に設計変更
図面設計の段階で、できるだけシンプルで削り出しやすい形状になるよう工夫しましょう。不要な凹凸や深すぎるポケット形状を避け、工具がアクセスしやすい形状にすると加工時間を短縮できます。削り取り量を減らす設計変更はそのまま加工工数の削減につながります - 発注ロットの集約
可能であれば部品をまとめて発注することも有効です。一度に複数個を依頼すれば、材料のまとめ調達による単価低減効果が得られ段取り・セッティングの手間も一度で済むためトータルの工数を圧縮できます。試作段階でも、将来見込まれる使用数を考慮して予備を含めて発注すると、一個あたりコストを下げられます。 - 材料選定の見直し
要求性能を満たす範囲で、価格の安い材料を選ぶのも手です。例えば強度や耐熱がそれほど必要でない試作品なら、高価なエンプラではなくABSやポリプロピレンで代替できないか検討します。また、業者が在庫している規格材を利用すれば材料取り寄せのコスト・リードタイムを省けるため、事前に相談してみましょう。
納期短縮のヒント
計画段階
- 早期発注:開発見通しが立った段階で早めに相談
開発の見通しが立った段階で、できるだけ早く加工業者に相談・見積もり依頼を行いましょう。前倒しで発注計画を共有しておくことで、工場側もリソースを確保しやすくなり、結果的にスムーズな納品につながります。特に繁忙期には早めの発注が肝心です。 - データ整備:正確な3D CADデータと明確な仕様書を準備
3D CADデータや図面を正確に用意し、要求仕様を明確に伝えることで、加工プロセスの手戻りを防ぎます。加工途中の設計変更は納期遅延の大きな原因となるため、発注前に仕様を固めておくことが重要です。必要に応じて公差や仕上げの優先順位も伝えておくと、業者側で工程を最適化しやすくなります。
柔軟な対応
- 素材変更:業者在庫材の活用
ぎの場合は、業者が手配しやすい在庫材料や、時間のかかる表面処理を省略する簡易仕上げなど、多少の仕様変更を検討するのも一策です。「この材料ならすぐ加工できます」といった提案を受け入れる柔軟性があれば、結果的にリードタイムを短縮できる場合があります。まずは納期最優先で対応する旨を業者に伝え、最適なプランを一緒に模索しましょう。 - 分割納品:重要分から先行出荷
数量が多い場合、一括納品にこだわらず出来上がり次第出荷してもらう方法もあります。重要な分だけ先行して受け取ることでプロジェクトを先に進められます。発注時に分割納品が可能か相談し、リスクヘッジするのも有効です。
加工業者との密なコミュニケーションにより、コストと納期の最適化を図ることが成功の鍵となります。
試作から量産まで樹脂切削加工のトータルサポート
ギケン株式会社は、樹脂切削加工に関するご質問やお見積もり依頼を随時受付中です。試作から中量産まで一貫対応できる弊社の強みを活かし、製品開発を全面的にサポートします。樹脂加工のノウハウを生かした、切削から量産成形へのスムーズな製品開発支援も得意です。お気軽にお問い合わせください。